熱中症から回復した後も、「夜眠れない」「眠りが浅い」「寝ても疲れが取れない」といった睡眠障害に悩まされるケースは少なくありません。これらの睡眠に関する問題は、熱中症の後遺症の一つとして現れることがあり、その背景には自律神経の乱れが深く関わっています。熱中症は、体温の異常な上昇と脱水によって、体温調節機能や全身の生理機能に大きなストレスを与えます。この極度のストレスが、心身のリズムを司る自律神経系にダメージを与え、そのバランスを崩してしまうのです。自律神経は、日中の活動時に優位になる交感神経と、夜間の休息時に優位になる副交感神経がバランスを取りながら、睡眠と覚醒のリズムをコントロールしています。熱中症によるストレスは、この自律神経のバランスを乱し、夜になっても副交感神経が十分に優位になれず、体がリラックスできない状態が続くことがあります。これが、熱中症後の睡眠障害の主な原因と考えられます。具体的に、熱中症が自律神経に影響を与え、睡眠障害を引き起こすメカニズムはいくつか考えられます。まず、体温調節機能の不調です。熱中症で体温調節中枢がダメージを受けると、体温が適切に調整されなくなり、夜間になっても体温がスムーズに下がらないことがあります。人の体は、眠りに入る際に体温が自然に低下しますが、これがうまくいかないと寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりします。次に、熱中症による身体への強いストレスは、交感神経を活性化させ、不安や緊張状態を引き起こします。これが夜間になっても継続すると、心が落ち着かず、寝付けない、あるいは途中で目が覚めてしまうといった不眠の症状を引き起こします。また、悪夢を見やすくなったり、夢の内容が鮮明になりすぎたりすることもあります。さらに、熱中症による全身の疲労や倦怠感も、睡眠の質を低下させる要因となります。体がだるく、十分な休息が必要であるにもかかわらず、自律神経の乱れによって深い眠りに入ることができないため、寝ても疲れが取れないという悪循環に陥ります。